コラム詳細

部屋の中心から広がる暮らし

人の暮らす部屋 vol9
2023.02.28

2LDK/56.47m²/築22年/最寄り駅から徒歩1分
20代/男性/お2人暮らし

東京・上野や浅草エリアが徒歩圏内の副都心、かつなんと、
地下鉄の駅の出口の上という好アクセスのマンション。
山口さんは「リノベ百貨店」の営業としてリノベーション工事を担当したこの物件に惚れ込み、自ら移り住むことに。
奥様と引っ越して来て、約3ヶ月。
部屋づくりについて、話を聞いた。

●引っ越しを繰り返して、ついに出会えた物件

実は、結婚して以来毎年のように引っ越しを繰り返してきて、今回で5回目。
この物件に惹かれたポイントは、まずはアクセスの良さだった。
仕事柄、様々な場所にある物件へ赴くため、効率的に各現場へアクセスできる点は魅力的だ。

加えて、夫婦共に「次はありきたりな1LDKじゃない、変わった間取りがいい」と考えていたところだった。
これまで引っ越しの経験を重ねたからこそ見えてきた、2人の希望が叶う物件に、ついに出会えたのだという。

●円形のダイニングテーブルを、四角い部屋の中心に

2LDKの間取りのうちの、LDKにあたるこの部屋は、ほぼ正方形。
リビング・ダイニング・キッチンが分かれていない、一体の空間だ。
その中心にまず、2人が理想としていた北欧のヴィンテージのダイニングテーブルを据え、
テーブルを活かすための部屋づくりを目指した。

2人共テレビを見ないため、テレビは持っていない。
部屋のレイアウトの際、どの壁に沿わせてテレビや家具を設置しようかと、壁を起点にする考え方が一般的かもしれないが、2人は部屋の中心を起点にして考えたのだ。
そのため既成概念にとらわれない、自由なレイアウトが可能になった。

●オープンキッチンも、部屋の見せ場

「リノベ百貨店」オリジナルのリノベーション物件ブランド “eims craft” で採用しているシステムキッチン。
家具のような趣のある佇まいが魅力のシリーズだ。
この物件では、深い色味のウッドパネルと白い人工大理石のトップのコントラストが清々しい組み合わせをセレクト。
オーナーさんのご要望に応じ、ごくシンプルな仕上げとした。
下部に収納スペースがたっぷりあるため、食器や調理器具、調味料などキッチン周りのほとんどの物を中に収納している。
見える所にまったく何も置かないわけではないが、詰め込みもしない、絶妙なバランス感と余白が心地いい。

●ダイニングとは別に、チルスペースを設置

南向きの窓とベランダを備えた、日当たりのいい部屋だ。
サンルームのように明るく気持ちのいい一角に、小ぶりなテーブルとチェアを配した。
ここでちょっとした作業をしたり、外の景色を眺めたり。
チルスペースとして、食事などをするメインのダイニングスペースと使い分けている。
1つの部屋の中に2組のテーブルセットがある様子が、素敵なカフェのようで楽しい。

●くつろぎのソファスペースも

レザー張りのソファでは、お昼寝をするなど、ダラダラとくつろぐのがお気に入り。
ソファ脇に置かれた、幅が1m以上もあるミラーは、枠がなく、大きさの割にごく軽やかな存在感だ。
むしろミラーのおかげで空間がぐっと広さを増して見え、開放感をもたらしている。
と同時に、見る角度によって変化する室内風景を映し出す、アートワークとしての輝きも放っている。
1つの空間の中に多彩なシーンがあるからこそ、そこに映り込む風景も実に面白い。

●家の中を自由にできる喜び

「インテリアは、妻のセンスに任せているんですが、妻のインテリアセンスが、この家で覚醒しました(笑)」と語る山口さん。
2人共がこの家に惚れ込み、「この家でなら!」と一念発起、引っ越しを機に処分した物・この家のために新しく買った物は多い。
中でも家具は、この家のためにほぼ一新した。

白い床は、本来のフローリングの上に、自分たちの手で塩ビのフロアタイルを敷き詰めて仕上げた。
そのレフ板効果で、南側の窓と反対側の壁にもよく光が回り、照明を点けていないのにこの明るさ。
白い空間と濃色の家具や植物とのコントラストがきりりと効いていて、アートギャラリーのようだ。

「家に帰ってくると、時々何か(植物が)増えていたりするんですよ」と、嬉しそうな山口さん。
奥様のセンスによって家の中に変化が起きることとその変化に気づくことを、楽しみにしている。
奥様も、家の中を自由にできる喜びを大いに感じられているそうだ。

●ちょっとしたスペースも、アートに

マンションの建設当初はおそらく固定電話を置くための台だったのであろう出っ張りとインターホンのスペースには、北欧のアーティストによるドローイング作品を飾った。
「インターホンの存在をごまかしたかったから」だそうだが、覆って隠してしまうのではなく、そのまま使える状態でアートとナチュラルに一体化させた工夫が光っている。

●照明も、飾るように

イサム・ノグチがデザインした、光の彫刻「AKARI」シリーズの名作照明。
竹と和紙からなるこの照明は、点灯していない時もオブジェとして美しい。
ちなみに左奥に見えるのは、「AKARI」に使用されている和紙が額装されたアートポスター。
さりげなく照明とアートポスターをリンクさせたコーディネートが見事だ。


●まだ完成はしていない

この家に引っ越して来てから、約3ヶ月。
ようやくリビングが出来上がってきたので、これから寝室ともう1部屋の中を作り込んでいくところだそう。
そのため今回は、リビングのみ見せてもらった。
が、リビングも、これでまだ完成はしていないとのこと。
ソファを買い替えようか、空いている壁沿いに小さなベンチを置こうかなど、理想のリビングを完成させるための悩みと楽しみはまだまだ尽きない。

「好きな物、心ときめく物だけと暮らしていきたい!」という2人の愛情と夢が詰まった、未完成の暮らし。
いい物件には、人のインテリアへの意欲とこだわりを掻き立て、才能を爆発させる力がある、と確信した。

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